配当金を支払った場合の支払調書及び支払調書合計表の書き方と提出について

2023-8-14


支払調書とは

支払調書は税務署が納税者の正確な支払いを把握するため、法人や個人に対し「誰に、どんな内容で年間いくら支払ったか」を税務署に報告するための書類です。法定調書は取引内容に応じて60種類存在しており、配当金についても提出が定められています。
配当金を支払った場合には株主ごとに作成する剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」(以下、支払調書)及び合計額を記載した剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書合計表」(以下、支払調書合計表)を作成し、提出する必要があります。

様式

記載要領と様式については国税庁のHPで提供されています。
配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書(2023/7/30アクセス)

【支払調書の様式】


【支払調書合計表の様式】


作成対象となる配当金

以下のケースを除く配当金の支払において支払調書を作成、提出します。

  1. 資本剰余金を原資として配当した場合で「みなし譲渡」に該当しない場合(支払調書は源泉徴収の対象となった配当に対して作成するものであるため)
  2. 株主1人当たりの支払額が30,000円以下(配当金の計算期間が1年未満の場合は15,000円以下)の場合


このうち2.株主1人当たりの支払額が30,000円以下のケースでは支払調書合計表において支払総額(支払調書提出省略分を含む)の欄には記載が必要ですが、左のうち、支払調書を提出するものの合計には含めない点に留意が必要です。


支払調書の記載方法

支払調書には主に以下の記載項目があります。これらの項目を記載した支払調書を作成する必要があります。

  1. 支払を受ける者の住所、氏名
  2. 個人番号又は法人番号
  3. 株式の数または出資もしくは基金の口数
  4. 配当等の金額、通知外国勢相当額、源泉徴収税額
  5. 基準日、支払確定又は支払年月日
  6. 1株又は出資1口あたりの配当(分配金額)
  7. 摘要
  8. 支払者の情報
  9. 支払の取扱者の情報


1.支払を受ける者の住所、氏名

当該欄には支払を受けた株主の氏名又は住所を記載します。株主が個人の場合は、その氏名と居住地(住民票に記載の住所)を記載し、株主が法人の場合は、商号と本店若しくは主たる事務所の所在地を記載します。

【記載例】


2.個人番号又は法人番号

株主が個人の場合は、個人番号(マイナンバー)を記載します。株主からマイナンバーを収集していない場合は、支払調書の提出に備えて予め収集しておく必要があります。
株主が法人の場合は法人番号(13桁)を記載します。法人番号は国税庁の法人番号公表サイトより取得することが可能です。

【記載例】


3.株式の数または出資もしくは基金の口数

「株式の数又は出資若しくは基金の口数」の「種類」の欄には、それぞれ次のように記載し、それぞれに対応する株数を区分の欄の区分に従って記載します。
種類には配当に関して種類株式を発行している場合は「優先株」、「後輩株」といった記載をします。配当に関して種類株式を発行していない場合は「普通」と記載します。
また、支払うべき配当が租税特別措置法第8条の4第1項に規定する上場株式等の配当である場合は「(上場)」と記載し、それ以外の配当である場合は「(一般)」と記載します。
旧株と新株の違いですが、旧株は既に発行している株式を指し、新株は配当計算期間中に株式分割や増資、合併・株式交換等により、新しく発行する株式のことを指します。新株は、配当金の支払い計算を新株発行日から決算期末までの日割り計算を行うケースがあることから旧株と区別できるようになっています。

【記載例】


4.配当等の金額

配当等の金額にはその株主に支払った配当金の総額を記載します。源泉徴収税額には配当金に対する源泉徴収した所得税の額を記載します。

【記載例】


5.基準日、支払確定又は支払年月日

基準日は、配当金を受ける権利を持つ株主や投資家を特定するための日付です。

基準日に株主の名簿が作成され、その時点での株主情報が確定されます。基準日を過ぎて株主となった場合でも、基準日時点で株主になっていることが重要です。この日付を基準にして、配当金の支払いなどの株主に関連する処理が行われます。
支払調書にはその基準日を記載します。支払確定又は支払年月日には株主への配当金の支払日(振込日)を記載します。

【記載例】


6.1株又は出資1口あたりの配当(分配金額)

1株又は出資1口あたりの配当(分配金額)には配当金総額を株式数で除した、1株当たりの配当金金額を記載します。

【記載例】


7.摘要

摘要は以下のケースの場合に記載します。

  • 無記名株式等について、元本の所有者と配当等の受領者とが異なる場合には、元本の所有者の住所若しくは居所又は本店 若しくは主たる事務所の所在地及び氏名又は名称を「摘要」の欄に記載します。
  • 租税特別措置法第5条の3第1項の規定により非課税とされるもの又は同条第3項後段の規定により源泉徴収が不適用 とされるものについては、その旨を「摘要」の欄に記載します。
  • 納税管理人が明らかな場合には、その氏名及び住所又は居所を「摘要」の欄に記載します。
  • 支払を受ける者が非居住者又は外国法人である場合には、「摘要」の欄に(非)と記載します。
  • 所得税条約に基づき課税の軽減又は免除を受けるもの(外国居住者等所得相互免除法第2章の所得税の軽減又は非課税に 関する規定により軽減され、又は非課税とされるものを含む。)については、その旨を「摘要」の欄に記載します。


8.支払者の情報

支払者の情報には配当金を支払った株式の発行会社の情報を記載します。

【記載例】


9.支払の取扱者の情報

支払の取扱者は配当支払者が主に上場企業の場合に、「支払の取扱者」には、証券会社などの口座管理機関の名称を入力します。
上場企業の配当の場合は株主に直接振り込まれるのではなく証券口座を管理する証券会社の口座に入金されます。そのため、その口座管理を行う証券会社などの情報を記載します。

支払調書合計表の記載方法

支払調書合計表には主に以下の記載項目があります。これらの項目を記載した支払調書合計表を作成する必要があります。

  1. 提出日と所轄税務署
  2. 提出者の情報
  3. 整理番号
  4. 調書の提出区分、提出媒体、本店一括
  5. 作成担当者、作成税理士
  6. 基準日、支払確定又は支払年月日
  7. 支払に関する情報
  8. 摘要


1.提出日と所轄税務署

提出日は所轄税務署へ提出する際の日付を記載します。また、所轄税務署(国税)をご記載下さい。

【記載例】


2.提出者の情報

提出者の情報の欄には株式発行会社の情報を記載してください。

【記載例】


3.整理番号

整理番号は税務署が各会社に割り当てている番号(法人番号とは異なります)で、確定申告書や支払調書合計表に記載されています。不明な場合は所轄税務署にお問い合わせください。

【記載例】


4.調書の提出区分、提出媒体、本店一括

調書の提出区分は提出状況に応じて以下の4種類から選択します。

  • 新規=1 新規に法定調書を提出する場合
  • 追加=2 中間配当等で既に法定調書合計表を提出しており、追加の場合
  • 訂正=3 訂正分の場合
  • 無効=4 誤って提出した場合等


提出媒体は、税務署への提出する形式を選択します。支払調書の枚数が100枚以上の場合はe-Tax又は光ディスク等による提出が必要となります。

  • 電子=14 eTaxによる電子申告の場合
  • FD=15 フロッピーディスクによる提出の場合
  • MO=16 光磁気ディスク(MO)による提出の場合
  • CD=17 コンパクトディスク(CD)による提出の場合
  • DVD=18 デジタルバーサタイルディスク(DVD)による提出の場合
  • 書面=30 印刷して書面にて提出する方法
  • その他=99 上記以外の方法


本店一括は複数の支店があり、各支店の税務署への提出を本店で一括して行うことの有無で、配当金の場合は「無」となります。

5.作成担当者、作成税理士

作成担当者には、株式発行会社の担当者を、税理士が作成に関与している場合は作成税理士の署名を記載します。

【記載例】


6.基準日、支払確定又は支払年月日

支払調書と同様に配当の基準日と配当の支払日を記載します。

【記載例】


7.支払に関する情報

配当金を受け取る株主の人数、配当金総額、源泉徴収税額を記載します。「支払総額」と「左のうち、支払調書を提出するものの合計」と欄が別れていますが、株主1人当たりの支払額が30,000円以下(配当金計算期間が1年未満の場合は15,000円)の株主は支払調書の提出が不要になるため、後者の欄には支払調書を提出する株主に対する配当金の情報を記載します。

【記載例】

8.摘要

摘要欄には1株当たりの配当金額を記載します。

【記載例】

 



まとめ

配当金の支払調書の作成手続きについて解説しました。
本記事が手続きを進める中でお役に立てれば幸いです。

クラウド株主管理システム「Shares」を使うと配当金計算の手続きをクラウド上で行うことができます。
Sharesに登録した情報から支払調書と支払調書合計表をカンタンに出力することが可能です。
また、配当金の計算から配当金計算書の配信までオンラインで実施することができます。是非導入をご検討ください。